私は、何度も眠りに落ちました。目覚める度に思いました。
「
何故、寝かして置いてくれないの?」
私に取っては現世が、地獄でしたし、死ぬ様な思いも何度もしています。だから生にそれ程の執着もありませんでした。
その話をした時に人権派の人は顔色を変えました。
「
戦争の行われている国に生まれて、毎日が生命の危険に晒されている外国の子供達に想像力を持て!」
でも
私の生まれた町も戦場だったのです!
私がどんな苛めをされたかを語ると「
そんな事がある訳がない!」「法律違反なんだから訴えれば良い!」「それでも外国の子供と較べたら
小さな問題!」「
特殊なケース!」「
じゃあそういう場所に生まれて来なければ良かったじゃない!」彼らの言う事は何時も決まっていました!
堕されて お花畑を 見る我や カピタンに柔道の絞め技を掛けられた時に、私はお花畑を見ました。
その時もお祖母ちゃんに「こっちに来るのは、早い!」と追い返されました。
「
何時までネンネしているんだよ!」 マリに頬を叩かれて目が覚めました。「
ボインちゃん!そう簡単に向こうに行けると思ったら大間違いよ!ひ◎◎きは蘇生術も心得ているのだからボインちゃんを何度も上りつめさせてまたこっちに呼び戻す事が出来るんだよ!ボインちゃんが向こうに行っちゃつたら、苛める相手がいなくなって寂しくなるじゃない?少しは相手の気持ちになって考えなさい!」私は泣き崩れました。
「
ねえ?ボインちゃん!首絞められるのってS◎Xの時より気持ちが良いって本当?」「
だったらお前自身の身体で試して見れば良いだろう!!」「
あんだと!それが担任に向かっての口の利き方かよ?」
マリは、両手で私の首を絞めて来ました!「
お前!感じてるのか?姉ちゃんの絵の前でパ●ツを濡らす気分はどうだよ?」
「お祖母ちゃんは、NUEに『
こんな地獄で生きろ!』って言うの?
あんまりにも酷すぎるよ!」その時の私はまだ
10歳でした!!
先生はこの句を
友と行く お花畑の 楽しさや と「
添削」して「素直ないい句になった!」悦に入っていました!お花畑しかあっていないじゃないですか?
これは、全然別な句だから、私の名前では載せないで欲しいとお願いすると「折角教えてやったのに!」と舌打ちをされました。
「
辛かったでしょう?」泣きながら私を抱きしめてくれたのが右京さんでした。
あの時と同じく、右京さんは倒れている私の身体を摩ってくれました。実のお母さんだってそんな事をしてくれた事は、ないのに!でも右京さんは、確か一月前に・・・
右京さんは70を過ぎていたけれど独身でした。
「
余程、性格に欠陥があるのだろう?」
妻帯者である「先生」とその取り巻き達は、陰口を叩いていました。
私には、
初恋の彼が、特攻隊員で海の藻屑となったという話をしてくれました。
「それから何年経ったと思っているんだ!性格に問題さえなければいくらでも結婚の機会があったはずだ!」先生は言ったけれど右京さんはどうしても彼の事が忘れられなかったそうです。
素直な句が作れないから結婚出来ないと言っていた「先生」は俳句の会に来ていた人妻と「
不倫・不倫」をしたそうです!
前の奥さんとの籍が、抜けていないから奥さんと呼ばれていたのは、実は「
愛人」だったのです!
「わたしは、俳句を◎十年もやっている!」「先生」は自慢していたけれど正直言って「それでこの程度?」という腕前だったのは添削した句を見て頂ければ分かると思います。
文学の素養もまったくありませんでした。その点、右京さんは、本物でした。終戦直後、大原富枝の「建礼門院右京太夫」がベストセラーとなったと言う話をしてくれたのも彼女です。(本名を書く訳にはいかないので此処では右京さんと呼ばせて貰います)
源平の合戦で恋人資盛をなくした右京太夫に最愛の人を戦で失った自分を重ね合わせる人が多かったのでしょう!
「
太平洋戦争と源平の戦をごっちゃにするなんて皆に笑われる!」「先生」は声を立てて笑いました!ちなみに壇ノ浦の合戦と言ったら「今は源平の合戦の話をしていたのではないか?」と問い、それが何年頃の出来事かも知りませんでした。「愛人」は資盛を
シモリと呼びました。
右京さんは辛かった私の昔の話を聞いて涙を流してくれました。
「十分ありえる事だ!何故なら、あの人を死に追いやったのだって女教師だったから!」
「戦争中、母は教師をしていて、多くの教え子を戦場に送った!同じ歴史を繰り返さない為、戦後は戦争反対を唱えた!90を過ぎた今も平和運動をしている母を尊敬しなさい!」言っていた女性がいました。
「貴女のお母さんの教えを信じて死んで行った若者は、後になって『それは、間違いでした!』と言われたらどう思うと思いますか?」
「家の母じゃなくてそれは天皇陛下が、命令したのよ!」「でもそれを生徒に伝えたのは、先生であった貴女のお母さんじゃないのですか?」「最終的な判断を下したのは、その子達自身だから、自分が悪いのよ!現に母が『戦争に行け!』と命令したって、行かなかった子だっているんだから、そういう子を見習えば良かったのよ!」
「先生の命令に忠実に、従った子よりも従わなかった子の方が偉いと言うのですか?命令に従わなかったずるい人間が、得をする世の中であって良いのですか?」
「その子は元々がそういう運命だったんだから仕様がないじゃない!」「死んだ人間を、仕様がないで片付けて良いのですか?今、起きている戦争で死んで行く人達も仕様がないと言う事になるのですか?」「五月蝿いわね?そのくらい自分で考えなさいよ!」「貴女のお母さんは、『今も自分の考えは間違っていない!』と言いつづけるべきです!嘘の間違った教えで自分達は、死んだんじゃない!!とその子達が、思える為にも!」「レベルが低過ぎて話をする気にもならないわ!」「貴女のお母さんと話させて下さい!」「その必要はないわ!」「『死んだ子は運命だったから仕方ない!』なんて言ったら怒る人達がいると思いますよ!」「母はもう九十過ぎているのよ!何かあったら責任取れるの?」「それも運命だったのでは、ないですか?それとお母さんの教え子は幾つで死んだのですか?」
このやり取りを聞いて私のレベルが、低過ぎると思いますか?
彼女のお母さんが、右京さんの彼の先生であったとは限りません。しかし日本中にこういう先生がたくさんいる事は知っていました。
「先生」は別に左のイデオロギーを持っている訳ではないけど戦争で大切な人が、亡くなったと聞くと「あの戦争は、侵略戦争だったんです!」と言って見せる様な人でした。
「特攻隊員は純粋に国を思って死んで行った!」と言えば、「実際には、恐怖のあまりにガタガタ震えていたんです!」まるで見て来たかの如くに語る人でした!
右京さんは、私の俳句が好きだと言ってくれましたが、「先生」は気にいらない様でした。
どんな添削をされたか、幾つか例を上げます。
虫は皆 雌大きいと 泣く娘
息子に 大きな 虫を採る
私は、自分の身体が大きい事にコンプレックスを持っていました。でも虫は皆、雌の方が大きいじゃないですか?
「小柄な女の人が、大きな女を見たら不愉快になる気持ちになって考えなさい!」先生自身は小柄な人でした!その逆は「そういう身体に生まれて来なければ良い!」
干からびた 野菜と女 冷蔵庫
家族の為 野菜を買う 冷蔵庫
右京さんも一人の暮らしが、長いし仕事をして来た女だから「情景が目に浮かぶ様だ!」と膝を叩いて笑いました。
偶に時間が出来て、お料理でもしようと冷蔵庫を見たら何時のモノか分からない野菜が出て来た。「そういえば何ヶ月か前にも、ふと時間が出来て料理でもしょうかとたくさんの野菜を買って来た事が、あったな?」
私も右京さんもお料理も出来ないからお嫁にいけないそうです!
緑の日 父の終わらぬ 昭和かな
子供の日 父と将棋をする
「昭和なんてもう終わったじやないですか?笑われますよ!」
乱歩の忌 マネキン消える 飾り窓
春の服を着ているハウスマヌカン
「乱歩なんて作家を知っている人ばかりとは限らない!」「お前が知らないだけだろ?」「ハウスマヌカンと言う言葉を知っている『先生』はナウい!」「その言葉、両方とも古いと思いますよ!」
氷菓なめ 白馬の王子 あらわれず
彼氏と食べるアイスクリーム
「家の娘は、良い子だから10代で子宝が出来、結婚したんですよ!」「ただの身持ちの悪い女では?」
何処行った 家族あわせの 父の札
父とするトランプ
「こんな句をちゃんと両親が揃っている人が聞いたらどんなに不快になるか考えろ!」「私も父親自慢とかは不快だけど口には出しませんよ!」前の添削の時にも思ったのですが、「俳句が5・7・5って知っています?」「お前みたいに昨日や今日、俳句を始めた奴と違い俺は◎十年もやっているんだよ!」
あの時にババアどもが、拍手したんだっけ!ムカつく!!
帰らざる 旅ゆえ殺す 小鳥かな
友達に 小鳥を預けて 旅行に出る
「素直ないい句になった!」「どこがだよ?」
「NUEちゃん!死んじゃ駄目よ!貴女は、春◎先生なんかよりずっと才能があるんだから!」
「右京さん!でも右京さんは一月前に亡くなったのでは?」
(続く)
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あちらの世界に旅立った方々が、「まだ来ちゃ駄目」と仰るのだからさ・・
俺もNUEちゃんには、幸せになって欲しいよ。